遭難者と夕日
日の出前、起きない妻子を部屋に残し、マーサポイントまで一人で朝日を見に行く。マーサポイントはグランドキャニオンで1,2を争う展望台らしく、朝日を見に訪れる人も50人ぐらいはいたと思う。
展望台の位置がとてもよく、グランドキャニオンをバックに写真を撮るならここが一番かも知れない。
今日はグランドキャニオン最後の日。まだトレイルを歩いてないので、是非一つは歩きたいと思い、展望が開けていて景色は素晴らしいが昼間は灼熱というサウスカイバブトレイルを昼過ぎに歩くことにした。
この写真はマーサーポイントから眺めたサウスカイバブトレイルの一部。写真中央奥にある赤茶けた幅の狭い帯状の崖があるが、あの崖を右手の方から伝う様にトレイルが付いているのだ。確かに展望は良さそうだ…
出発は昼頃。本当は昨日の夕方に歩ければ良かったのだが仕方が無い。水を余分めに用意し、バスを乗り継いでトレイルヘッドまでやってきた。
まだトレイルには影があるようだ。始めのスイッチバックがミュール(客を乗せてトレイルを下る)の糞だらけで臭うのには参ったが、影もあるので娘を担いで快調に歩く。途中、とても見晴らしの良い場所で休憩しておにぎりを食べる。写真中央はオニールビュートと呼ばれ、その下に見える道のようなものはファントムランチまで続くトレイル。私達はビュートの手前の岩棚まで行くことにした。
途中レンジャーがすれ違い、何処まで行くのか、水と食料はどの程度持っているのかと質問してきた。どうやらトレイルでは毎年多くの人が動けなくなって救助を求めるのだそうだ。決して娘を背負った私が頼りなさげに見えたから声を掛けられたわけではない(だろう)。救助されるのは若者や昔鍛えていたという年配者が多いようだ。自分の体力を過信し、限界まで歩いて動けなくなるんだとか。
結局、1時間ほどで目的のシーダーリッジに到着。昼ご飯を食べて少し休憩。ここのリスは挑戦的で、常に周りをうろつき、寄ってきては食べ物を狙っていたが、こちらもお腹が減っていたので一粒も与えず(もっとも、国立公園で動物に餌を与えるのは厳禁)。食後はビュートが近くに見える展望ポイントまで行き、重い腰を上げて帰路に着いた。
帰路は思った以上にきつい。グランドキャニオンでは谷底に近づくほど気温が上がるのと、帰りは1時頃になったので、日陰がほとんど無かったのだ。「地球の歩き方 ~ アメリカの国立公園」でも日陰が全くないので夏場はきついと書いてあったがこれは本当にその通り。娘を担いで上がるからというのもある。
今までのトレイルでの経験から、あまり無理をして上がると長くもたないと悟ったので、暑いながらも適度なスピードで確実に上がっていくことにした。失敗から学び、水と食料は十分にあるので焦って上がらないことだ。
ところが、一人の若い男性が無茶なスピードで横を通り過ぎて登っていった。見ると服装はどこかのバーやクラブで着てそうな軽装で、靴も山歩き向きの物ではなかった。変な奴だなと思っていると、少し先でへばって座っていた。「水を下さい」と言うので快く分け与えるとまた急いで登って行ったのだが、また少し先で座り込んでいた。見ると手のペットボトルは空で他に水は持っていない。自分のZIONでの拙い経験から、手持ちの水筒の水でペットボトルを十分に満たして上げて、事情を聞くと何と女性の連れと一緒に前述のオニールビュートを超えてどんどん下り、彼女は足を痛めて下で休憩して助けを待っていると言うのだ。まさか本当に要救助者に出会うとは。
レンジャーと最後にすれ違ったのは午前なので、まずはトレイルヘッドまで上がり、救助を求めるしか無さそうだ。彼(ドイツ人?)はお腹を空かせていたので、おにぎりをあげた。感謝を述べた後は、一気に坂を上がっていった。
トレイルヘッドまで戻ると、彼が連れと思われる若者と話をしていた。その内の2・3名がトレイルを戻り、休憩中の女性を連れ戻しに駆け下りていった。何も大事になって居なければ良いがと思いつつ、帰りのバスを待ち、展望台によってからVisitor Centerに戻った。すると、Visitor Centerで例の彼と再会。「女性は戻ってこれた。その節はありがとう。」と言ってきた。連れであろう女性が傍らにぐったりと座っていたが、何と服装は白い薄手のドレスとサンダル。全くトレイルを歩くのに適さないカッコウで、如何にも体力が無さそうなインドア系の女性だった。よくこんな格好で我々よりも下に下りて行ったその無計画さにビックリしたが、まぁ無事そうで良かった。
そんなこんなで、もう夕方前。どうやら今日は天候が持ちそうな気配なので夕焼けが見れるだろうと踏み、早めに夕食を食べる。ステーキが美味しいという噂のSteak Houseで定番を頼むと特大だった。中々美味しかったです。
夕食後、再びバスに乗ってホピポイントへ。まだ夕暮れまで時間があるのに、今日は多くの観光客が既に集まっています。到着した時の西の空は、まだ夕暮れで空が焼けるには少し間がありました。太陽が雲に隠れ、まるで開演を待つステージとカーテンのようです。
太陽が雲の下に顔を出すと、一気に空は赤く染まります。グランドキャニオンは東西に流れているので、東側の斜面が順番に赤く染まっていくのは日の出と全く逆。
岩肌は刻一刻と赤々と燃え上がっていきます。夕日が沈むまでの短い間、皆感嘆の声を上げながら風景や記念写真を撮ったりと、その感動を連れと分かち合っていました。本当に綺麗です。個人的には、グランドキャニオンは朝日よりも夕日の方が印象的でした。朝日はモニュメントバレーで見たものが最も印象に残ったので。
夕日が沈みきる頃にはもうグランドキャニオンは真っ暗になります。もし夕日を見るなら、日没の最低30分前にポイントに着くのがいいでしょう。最後は夕日が沈むのを見届け、バスに乗り込みました。
無事に夕日を見れ、思い残すことも無くラスベガスへと車を走らせました。しかし5時間も掛かり、8時出発で夜中1時にホテル到着。長かった道中はカラオケ大会と化し、眠くなることはありませんでした。









